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工場の心臓部ともいえる受変電設備。新規立ち上げの際、推奨品と認定品の違いに頭を悩ませる経営者は多いものです。ここでは両者の定義と選定基準を明確にします。
推奨キュービクルとは、一般社団法人日本電気協会が定めた厳格な審査基準をクリアし、推奨を受けた受変電設備を指します。具体的には高圧受電設備規程およびJIS C 4620(キュービクル式高圧受電設備)に適合していることが前提となります。
単に規格を満たしているだけでなく、立会試験などを通じてその品質や安全性が第三者機関によって保証された製品である点が重要です。
工場の新規立ち上げにおいて、電気設備のトラブルは操業停止に直結する最大のリスク要因となり得ます。過去に起こった事例でも、コストを優先して粗悪な設備を導入した結果、頻繁な不具合に悩まされた経営者がいました。
推奨キュービクルは、そうしたリスクを未然に防ぐための「品質の証」といえます。形式認定を受けることで、同型の製品であれば個別の詳細な試験を省略できるメリットもありますが、品質の高さは長期間にわたる安定稼働を支える基盤にもなるのです。
参照元:日本電気協会 関西支部|推奨キュービクル(https://www.jea-kansai.jp/cubicle/suisyouc.shtml)
認定キュービクルは、消防法に基づく非常電源専用受電設備としての基準を満たした製品です。スプリンクラーや屋内消火栓設備、排煙設備など、火災時に作動しなければならない防災設備への電力供給を主目的としています。
消防庁告示で定められた構造や性能を有し、一般社団法人日本電気協会の認定委員会によって審査・認定されたものを指します。
通常の電力供給とは異なり、認定キュービクルには「極限状態での確実な動作」が求められます。火災という有事の際に電気が止まってしまえば、消火活動や避難誘導に致命的な支障をきたすからです。そのため、耐熱性や耐火性において極めて高いハードルが課されています。
工場建設において消防署との協議が必要になるケースでは、この認定キュービクルの設置が義務付けられることが多くあります。
参照元:日本電気協会 関西支部|認定キュービクル(https://www.jea-kansai.jp/cubicle/ninteic.shtml)
両者の決定的な違いは、その目的にあります。推奨キュービクルは、日常的に使用する電力供給の信頼性と安全性を担保するための任意の制度に基づいています。
対して認定キュービクルは、消防法により設置が義務付けられる防災設備への給電を目的とした法的要件の強い製品です。一般負荷への供給がメインなら推奨品、非常用電源の確保が必要なら認定品、という区分けが基本となります。
推奨キュービクル最大の利点は、第三者機関による客観的な評価が得られている点にあります。メーカーが自社基準で作った製品とは異なり、日本電気協会という公平な立場の組織がお墨付きを与えているのです。
これは、電気設備の知識に乏しい施主にとって、製品選定における強力な判断材料となります。品質への不安を解消し、安心して導入できるという点はメリットといえるでしょう。
参照元:日本電気協会 関西支部|キキュービクルの認定・推奨について(https://www.jea-kansai.jp/cubicle/)
推奨品の認定を受けるには、製品そのものの性能だけでなく、それを製造する工場の品質管理体制も審査対象となります。適切な検査設備が整っているか、品質管理のフローが確立されているか等、厳しいチェックをパスしなければなりません。
つまり、推奨キュービクルを選ぶということは、間接的に信頼できる工場で作られた製品を選ぶことと同義ともいえます。
る際には、点検や保安のために周囲に一定のスペースを空ける必要があります。また、建築物からの距離に関しても、消防法や火災予防条例によって厳しい制限が設けられています。
しかし、推奨キュービクルは不燃性の箱体に収められ、延焼のおそれがない構造であると認められているため、これらの離隔距離に関する規制が緩和されます。
例えば、建物の壁面や隣接する工作物との距離を短縮できる場合があり、敷地に余裕のない中小規模の工場にとっては、スペースの有効活用につながります。土地という限られたリソースを最大限に活かすためにも、設置場所の自由度が高い推奨品を選択する価値は十分にあるといえるでしょう。
認定キュービクルを導入する最大のメリットは、消防検査の手続きが大幅に簡素化されることです。通常、非常用電源設備を設置する場合、所轄の消防署による詳細な検査や複雑な書類提出が求められます。
しかし、認定品であれば、その性能が既に保証されているため、図面添付などの一部手続きが省略可能となります。工期の短縮や事務負担の軽減は、迅速な工場稼働を目指す経営者にとって無視できない要素です。
参照元:日本電気協会 関東支部|キュービクル推奨・認定(https://www.kandenkyo.jp/index.php?p=cubicl)
推奨キュービクルは品質の高さがメリットですが、それが故のデメリットも存在します。
まずはコストです。厳格な規格に合わせて製造され、審査を経ている分、非推奨の汎用品と比較して製品価格は割高になる傾向があります。初期投資を極限まで抑えたいと考える創業期の経営者にとっては、痛い出費と感じられるかもしれません。
また、納期に関しても注意が必要です。推奨品は基本的に受注生産や規格に沿った厳密な製造工程を経るため、発注から納品までに時間を要することがあります。急ぎで工場を稼働させたい場合、このリードタイムがネックになる可能性も否定できません。
さらに、規格品であるがゆえに、特殊な形状や極端に狭い場所への設置など、特殊なオーダーメイド対応には柔軟性を欠く場合があります。自社の工場のレイアウトや予算感と照らし合わせ、オーバースペックにならないか冷静に見極める必要があります。
認定キュービクルを運用する上で最も注意すべきは、改造の禁止という鉄の掟です。認定を受けた状態から少しでも手を加えると、その瞬間に認定は失効してしまいます。
例えば、ブレーカーを一つ増設する、配線を通すために壁面に小さな穴を開ける、防水用のプルボックスを後付けする、といった軽微に見える加工であっても、図面と異なる仕様になれば改造とみなされます。
認定が外れれば、消防法違反の状態となり、最悪の場合は使用停止命令などの行政処分を受けるリスクもあります。現場の担当者が良かれと思って行った改修が、企業のコンプライアンスを揺るがす事態になりかねません。
一度設置したら、勝手な手出しは無用です。変更が必要な場合は、必ず専門業者やメーカーに相談し、正規の手順を踏むことが求められます。
※このサイトで取り上げている電気工事会社の中で、公式サイトでキュービクル工事について説明している神奈川の会社(15社)のうち、コスト削減の方法について掲載していた3社を紹介します。
※2021年3月調査時点